【完】素直じゃないね。
なにげなくスマホを取り出し、ディスプレイに表示された文字を確認した俺は、思わずスマホに釘付けになる。
『日吉つかさ:今日は助けようとしてくれてありがとね。すっごく嬉しかった』
それは、つかさからのメッセージだった。
「なにかあった?」
突然耳に届いた声に、俺ははっと我に返る。
スマホに気を取られていた俺の意識が、再び美織に向けられる。
「え?」
「なんだか、元気ないように見えるから」
核心をつく美織の言葉に、俺は微かに目を見開いて押し黙る。
「……」
それは、勘違いだ。
勘違いじゃなきゃいけないんだよ、美織。
俺はスマホをしまうと、笑顔を作って美織に向けた。
「なんにもないよ」