【完】素直じゃないね。


美織の目を見ていられなくて、俺は飲み終わったコーヒーの缶を捨てに行こうとする。


だけど、後ろから手を掴まれ、その反動で俺の足は止まっていた。


振り返ると、美織が眉をハの字にして必死な表情で俺を見上げていた。

縋るようなその瞳に、俺は逆らえない。


「来週の日曜、一緒にデートしたい」


「え?」


美織からこうして提案してくることは、珍しかった。


「いい……?」


「うん、しよ、デート。
美織が行きたいとこ、行こう」


笑顔で答えると、美織がうつむく。


「ごめんね。ありがとう……」


「全然いーよ。
今日はごめんねが多いね、美織」


俺はそっと微笑んだ。


ごめんを言わなくちゃいけないのは、俺の方なのに。





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