【完】素直じゃないね。
遠かった悠月の背中が、どんどん近づいて。
駆けて、一番後ろを歩いていた悠月に追いつくと、考えるよりも先に伸びていた手が、ギュッと悠月のブレザーの裾を掴んでいた。
引き止めた悠月の足の動きが止まる。
「──行かないで」
こぼれ出たのは、あまりにも小さくて、多分悠月にしか聞こえてない声。
前を歩いている女子達は、話に花を咲かせているせいかあたしが悠月を呼び止めたことには気づいていない。
緊張のせいか、心臓が早鐘を打つ。
でも、逃げちゃだめだ。
「他の女子とカラオケなんてやだ……」
震える唇で、勇気を振り絞りそう言った時。
不意に悠月の甘い香りがあたしを襲った──。