旦那中毒
彼の好きなもの
 「俺、スナックのオーナーになりたい。」
突然の申し出だった。
結婚して2年。
子育てに奮闘中の私は旦那の信じられない言葉に唖然とした。

トラック運転手をもう、5年もしていた旦那が、夜の世界に踏み込もうとしていたのを私は知らなかった。

「あなたが決めたことなら、私はついて行くしかないわね。」
結婚して2年足らずで、出せる言葉ではない。
だけど、出来た嫁と思われたかった。

「俺が金を出すわけじゃないんだ。ただ、名前だけ貸す。俺達は休みの日に飲みに行くだけでいいんだよ。」
なんておいしい話で、釣られたんだ。
正直そう思った。
どうせ、直ぐに尻尾を巻く。
うまくいくわけないと私は思っていた。

本職のトラックの休みの前の日の夜に、旦那は初めてその店を見に行った。
スーツを新調し、元々強面の旦那が、それっぽく見える。
スナックのオーナー。
聞こえもいいから、ホステスの女の子だって、チヤホヤするに違いない。
私の心配をよそに、旦那はスナックの仕事に夢中になっていった。
「俺、接客苦手だから、女の子に教わる事のが多くて辛いよ。」
確かに、愛想が良いとは言えない旦那。
想像はついた。
元々、地元の後輩が出したお店だった。
地元で顔の広い旦那の名前を借りた方が客が集まる。
最初は付き合いで、旦那の知り合いも客として沢山きた。
段々客も定着し、知り合い以外の客とも旦那は仲良くやれる様になっていった。
「今日は、斎藤さんが来てくれて、今度一緒にゴルフをやることになったよ。」
楽しそうに私に話す旦那。
まだ2才と、0才の赤ちゃんのいる私には、聞くことが精一杯だった。
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