女の秘密 -序章-
出会い
「あぁ、油断した」
薄暗い路地をフラフラと覚束無(おぼつかな)い足取りで歩きながらそう呟いた。
時刻はまだ10時を回った頃だろう。
今日は金曜日で、10時と言えばまだまだ宵の口。
表通りは賑やかだった。
呟いた女は、長い髪をゆるく巻いていて、体のラインにそって、流れている。
浅い息を繰り返し、薄っすらと汗ばんだ肌にシルクのワンピースがピタリと張り付いている。
「追ってくるかしら」
先ほどまで飲んでいた、馴染みのバーの裏口から出て、何度か辻を曲がって来た。
土地勘が無ければ迷子になるような場所まで来て、後ろを振り返りながらそう呟く。