専務に仕事をさせるには

小野課長はちょっと場所を変えましょうかと言って私達は屋上へと向かった。

屋上へ上がると外は少し雲がかかってどんよりとした空模様。今日は午後から雨が降ると天気予報で言っていた。

私達は屋上に置かれたベンチに座り、小野課長は上がって来る前に買って来た缶コーヒーを一口飲んで話し始めた。

「数年前から他社がうちとほぼ同じデザインの低価格商品を売り出したことでうちの売上が急激に下がり開発部では頭を抱えていた時期が合ったでしょ?」

勿論、同じデザインでも質の良さは断然うちの物が良かった。

社長は『いい物を作り続ければお客様は必ず戻って来る』と言い続けていた。

しかし、上層部の中から社長の考えは古いと声が上がり始め退任すべきではと副社長派から声が大きくなっていった。

そんな時、専務が帰って来た。

小野課長はてっきり専務が会社を立て直す為に帰って来たと思っていたが専務は社にもほとんど顔を出さず夜の街を飲み歩き、女遊びをしていると噂が広がったと言う。

しかし、急にお客様からのアンケートハガキの戻りが多くなり、売上も伸びて来た。

小野課長はハガキの送り主がいつも同じ人だと気付き、社販の履歴を確認したら専務の異様までの数が上がっていたという。それも毎月。


「専務はね? 小さい頃お父様を亡くし『自分がママを守るんだ』っていつも言っていたのよ… あの頃の専務ほんと可愛かったわ」


小野課長は昔を思い出すかの様に何処か遠くを見ていた。


「小野課長、専務の小さい頃をご存知なんですか?」


「うん。私が入社した頃はまだこんなに会社も大きくなくてね… 皆んな和気藹々と仕事をしていたわ… 百合子さんも身分や立場など関係なくいちデザイナーとして開発部に居たの… 私は百合子さんに1から仕事を教わったわ」


小野課長は社長の側で仕事をした事があったんだ…





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