専務に仕事をさせるには
彼は光永不動産の販売部 鈴石健太。
新入社員と思った彼は入社して二年目だと言う。
二年目だというのに初々しさが残っている。
人が良さそうで、押しの弱そうに見える。
この人今まで家を1つでも売った事有るのかな?
「あの… 失礼な事をお伺いしますが? 瀬戸様は近々ご結婚されるのでしょうか?」
「え?しませんけど?」
「あの… 度々失礼なんですけど、このマンションはうちの商品の中でもかなり高価な物件なので、もう少しお手頃な物件をご紹介しましょうか? あっこちらを見せないと言っている訳じゃないんです! 誤解しないで下さい」
あっそっか!?
OLの私が買えるような物件じゃないもんね?
いくら勤務先が大手でも、億ションを買えるほどお給料は貰っている訳がない。
冷やかしなら案内するまでも無いよね?
もし、本当に部屋を探しているなら、見合った物件を紹介するのがベストだろう。
「私は代理で探しでるんです。いくつかの物件をピックアップするのが私の役目なんです。ここが気に入るかどうかは別として、探してる人は十分お支払い出来る方なので、ご心配なく」
「あの… 重ね重ね失礼なんですけど… その方と… 瀬戸さんは… その… ご一緒…」
彼が聞きたい事は男女の関係かってことでしょ?
私はさっき結婚はしないと言った。
だから、私が愛人かって事を聞きたいんだよね?
愛人に億ションを買い与える、専務なら無理ではないだろうな…
「私は愛人なんかじゃ無いですよ? その方は近近結婚されるそうなんですけど、仕事が忙しくて、私はあくまで代理です」
「そうですか? 良かった!」
彼は嬉しそうに案内しますと言ってマンションの玄関へ向かう。
マンションは新築で先月内装工事が終わったばかりで後はクリーニングに入るだけだと言う。
「すいませんが、ここでスリッパに履き替えていただけますか?まだ土足厳禁なもので」
鈴石さんに言われ私は分かりましたと言って用意されているスリッパに履き替える。