専務に仕事をさせるには
「ちょっと宜しいかしら?」と女性の声。
向けられた声の方を見ると先程、小野営業マンとエレベーターを降りて来たご夫婦が困った様に立って居た。
営業マンは慌てて駆け寄り、待たせてしまったお詫びを言うが、ご夫婦の顔は渋い顔をしている。
そしてご夫婦は営業マンに背中を向けて帰って行く。
「ちくしょう… お前達のせいだ! 折角契約してくれそうだったのに…」
小太りのオジサンは私を睨み付けていた。
えっ? 私のせいで光永不動産はお客様を逃がしたの?
私は思わずご夫婦の元へ駆け出した。
「待って下さい!」
駆け寄った私にご夫婦は驚いて立ち止まってくれた。
「あの私のせいで氣分を害されたならお詫びします。 もう一度考えなおして頂けないでしょうか?」
頭を下げると婦人はあなたのせいでは無いと言ってくれる。
だが、契約はするつもりは無いという。
どうしよう…
「あの… ここのペントハウスはご覧になられましたか?」
「いいえ…」
「今から私、ペントハウスを見学するんです。 ご一緒に見学しませんか? こんな機会じゃないとペントハウスなんて見れないですよ? 思いっきりセレブ気分を味わいましょうよ? ねっ?」
私の申し出にご夫婦は顔を見合わせ、折角だからと一緒にペントハウスを見学する事になった。
私達はエレベーターに乗り、57階のペントハウスに向かった。勿論、小太りのオジサンもついて来た。
午後から雨だと言っていたがとうとう降ってきて、レインボーブリッジが見えると聞いていたがあいにくの天気で景色を楽しむ事は出来なかった。
たが、部屋はとても素晴らしく、広いリビングにダイニング、仕切られたキッチンの間仕切りを移動させてオープンキッチンとしてホームパーティも出来る。
ホームパーティを良くすると言うご夫婦も称賛する。
鈴石さんは目を輝かせ部屋を隅々まで説明してくれる。