専務に仕事をさせるには
「ご無沙汰しております。光永健太です。小さい頃祖父と青山のご自宅に何度かお邪魔させて頂きました」
光永健太? 鈴石じゃ無くて?
え? 嘘っ?
この人、光永不動産の…
「ああ、光永さんのご子息の健太君? 立派になられた。だが、鈴石と…」
「はい、母の旧姓で仕事をさせて頂いております。父が他の社員に気を使わせない様にと」
「そうかね? 光永さんらしい」
小沢営業マンは思いもしない鈴石さんの暴露話に驚き言葉が出ない様だ。
それも当然だろう。
自分の会社の御曹司と知らず、馬鹿にした様に接し、数々の暴言を吐いてきたのだから。
もはや繕っても繕いきれないだろう。
「この度はうちの小沢が大変失礼な事を申しまして、本当に申し訳ありませんでした」
鈴石さん、では無く、光永さんは七瀬さんに頭を下げ、もう一度社長の営業方針を社員に徹底させると約束をした。
七瀬さんは後日会社の方へ契約に伺うと約束をし、鈴石さんと小さくなっている小沢さんに見送られ帰っていった。
鈴石さんは小沢さんに先に社へ戻っていて欲しいと告げ私を駅まで送ってくれる事になった。
「瀬戸さんはこの後、他の物件をご覧になられるんですか?」
「その予定だったんですけど、この天気ですので…」
本当はもう一社、見学させてもらう様にお願いしていたのだが、雨が酷くなったので先程断りの連絡を入れた。
「もし、宜しければ見学予定の所までお送りしますよ?」
「あ、いえ、後日天気の良い日にします。汚してしまうといけませんから」
雨は先程より随分激しくなっている。
濡れた靴や洋服で新築マンションを万が一汚してはまずい、後日天気の良い日に見学させて貰うの方が良い。