専務に仕事をさせるには

「因みにお聞きしますが? 私のは何方に登録してありますか?」


「勿論こっち!」と主の携帯電話を示した。


私は、女友達でも会社の携帯電話でもなく主の携帯電話に登録してあると、聞いて嬉しくなる。

でもそれを顔に出さずにいる。 顔に出そうものなら専務の目が狩りをする雄の目に変わる事を知っているから。


「では、こちらの携帯電話はもう必要有りませんね?」


専務は私の言葉に少し抵抗しつつも女友達の方の携帯電話を渡してくれた。


「専務、今日の処はこれで予定は入っておりませんが、何か御用は有りますでしょうか?」


「無いけど、俺の仕事が無いって事は君も終わりだろ? 飲みに行こう?」


こんなに早くから?

まだ就業時間は過ぎていないと言うのに…


「いえ、私はまだ仕事が残っておりますし、今夜はひとに会う予定が有りますのでお付き合いは出来ません」


「じゃ、帰る!」と拗ねた顔の専務。


あらあらまるで子供みたい。


「そうですか? お帰りはご自家にお帰りくださいね? ホテルの荷物は全てご自家に送るように手配済みですので」


「マジか…」


「迅速に動かないと秘書は務まりませんから!」


私は専務に微笑んで見せる。

さっき秘書室から戻る際、社長室に寄り色々許可を貰って来た。

その1つに専務の荷物を実家に送る事なのだ。


「因みに明日の朝は社長とご一緒に出勤をお願いします」


「はぁ!? どうして?」


「まだ、運転手の選抜を済ませておりませんので」


室長の鶴見さんによると運転手としての経験は勿論だが、口の硬さなど色々考慮する事があって直ぐには決めれないと言っていた。

そりゃー社長の銅鑼息子だもん、考慮する内容は多いでしょ?


「自分で運転して来るから運転手は要らない!」


「それでは困ります!」


今朝の事もあるし、また、サボるかもしれない。


「私は車を持っておりませんので迎えに行く事は出来ませんから」


「じゃ、俺が君を迎えに行くよ!」


はぁ? どこの世界に秘書を迎えに行く専務が居るのよ!?

そんなのあり得ないでしょ?





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