専務に仕事をさせるには

「鶴見室長、大丈夫です。 専務はそのファイルに今から目を通します」


鶴見室長は私の言葉に驚いて居た。

そして専務は拒絶の言葉を口にする。


「俺は見ないと言ったんだ!? 絶対にファイルは見ない!」


「専務? もう始業時間です。 先程私とキス(口約束)しましたよね?」


「はぁ? 俺は何も約束していない」


「いいえ確かにしました。 まだ、始業時間前だと!! と、言う事は今はもう始業時間回ってますから、お仕事して頂けますよね?」

私は専務ににっこり笑って見せる。


私のキスは高いのよ! 専務?


まるで脅しにも取れる私の微笑みに専務は「やられた…」と呟いて居た。


鶴見室長は「私は優秀な部下を持ったようですね」と言って微笑んだ。


それから専務は鶴見室長からファイルを受け取り自席で目を通していた。

上着は脱ぎ、ネクタイを緩め、シャツの袖を捲り、お昼休憩も取らず真剣にファイルに目を通していた。

こんな専務初めて見た。

これが本当の姿の専務で仕事の出来る男なのだろう。

だから、2年もの間あちらの企業は専務を手放さずに居るのだろう。

専務は途中何度か鶴見室長に電話をし、鶴見室長は5時頃新しいファイルを持って専務室へ来た。

そして就業時間もとっくに過ぎ8時を過ぎた今も鶴見室長と話をしている。


「あの…お話中ですが?」


私の呼び掛けにふたりは振り向き驚いて居た。

多分、私がいる事など忘れて居たのだろう。


「あっごめん、君の事忘れてた」と専務が言う。


でしょうね?


「瀬戸さん、申し訳無いです」


鶴見室長も罰が悪そうにしている。


「お二人共お腹空いてませんか?」


「あっ」


専務はお腹が空いている事も忘れていたようだ。







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