あの頃、きみと陽だまりで



「全身が鈍く痛くて、視界もまともに見えなくて、段々と遠くなってく意識に、『あぁ、ここで死ぬんだな』って直感した。だから、必死に願ったんだ」

「なに、を……?」

「目の前に倒れる女の子だけは、助けてくださいって。最後くらいは、誰かの役に立ちたいって」



『誰かの役に立ちたい』



目の前の女の子だけは、つまり、私のことは助けてほしいって。

それが、新太の願い?



「強く強く願ったら、神様が時間をくれた。信じてもらえないかもしれないけど、俺の意識の世界の中で、1週間だけなぎさと過ごすことを許してくれた」



嘘?

神様?

新太の意識の中?



「な、に……言ってるの、なにそれ、笑えない」



まるで夢の話のようなその内容に、私は顔を引きつらせて笑って流そうとする。

けれど、いつものように笑ってはくれない新太に、作り話ではないのだと知る。



あの日本当は、新太は私を庇った時に命を落としていて、私を救おうと願ってくれた。

この1週間私が過ごしていたのは現実世界ではなく、新太の意識の世界の中。

全ては私の為に用意された時間だった。



……なんて、そんなこと言われて信じられるわけないよ。

信じたく、ない。



そう強く思う反面、だから新太は自分には未来がないかのような言い方をしていたんだ、と、納得できてしまう自分が憎い。


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