あの頃、きみと陽だまりで



「やだ、やだよ……そんなの嘘でしょ?そんな……」

「……ごめんね」

「私だけが生きていても仕方ないよ……ずるいよ、私には『生きて』って、『頑張れ』って言ったくせに……なんで」



上手くまとまらない言葉とともに、涙で視界が滲む。

信じたくない。なのに、涙がこうして溢れてくるということは、信じてしまっている証拠なのだと思う。



「きっと、俺はあの瞬間に死ぬ運命だったんだと思う。けどなぎさは、『もっと生きてみなさい』って神様が言ってくれてるんだと思う。だから、生きていてくれなくちゃいやだよ」

「やだっ……私だって、新太がいなくちゃいやだ!!一緒に生きて、もっといろんなこと教えてよ……だから、いかないで」



行かないで。

一緒に、同じ世界にいて、いつもみたいに笑ってよ。

いきなりタネ明かししてさよならなんて、そんなのずるい。



止まらない涙を拭う余裕もなく大きな声を出す私に、新太の細められた目元にも涙が浮かべられた。



「……ありがとう、なぎさ。君と出会えて、生きてきたこと、無駄じゃなかったって思えたよ」



新太はそう言って、私の額にそっとキスを落とす。

薄い唇の感触を額に確かに感じた。その瞬間、しっかりとつかんでいたはずの体が、手からすり抜けるように消えた。



まるで空気に溶けるように、その体は透けて、一瞬にして光になっていく。




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