あの頃、きみと陽だまりで



昨日も新太は、お昼に手早くチャーハンを、夜にはバランスよく野菜と肉を使った炒め物を……と料理を作ってくれた。

『料理、好きなんだよね』と言うだけあって、毎回きちんと自炊をしているらしい。

まるで主婦だ……。



感心するように思いながら、そろそろごはんを食べようか、と14時過ぎの時計を見ていると、どこからかカリカリ、と音がした。



「ん……?」



縁側のほうを見れば、締め切った戸の外側で、トラが『中に入れて』とでもいうように小さな手で戸をひっかいている。



「お前は……どこから出たの」

『ニャァァ~』



猫独自のルートから庭へ出たはいいけれど、入れなくなってしまったのだろう。

あきれながら戸を開ければ、トラは素早く室内へと入った。



この猫は、1日中家のあちこちをウロウロとしている。

けど庭に出ても敷地の外には出ないそうで、新太いわく『えらいっていうか、ビビりなんだよねぇ』とのこと。



するとトラはなにげなしにこちらに寄ってきて、私の足へすり寄った。



「わっ、なに、踏んじゃうって」



小さな体を踏んでしまっては大変だ、と咄嗟によける。

けれどそれを遊んでいると思ったのか、足元で八の字を描くようにうろうろと歩いてじゃれるトラが、ちょっとかわいい。


< 33 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop