この広い世界で、2度目の初恋を


窓から差し込む太陽の日差しが、瞼に滲んで一気に意識が浮上する。

「んん……王子……さ…ま…?」


自分の寝言でパッチリと目が覚めた。

私、またあの夢を……。

王子様の事を思い出して、胸元にあるはずのとんぼ玉に手を伸ばす。

でも、この手がとんぼ玉に触れることはなかった。

「そうだ……私、とんぼ玉無くしちゃったんだ……」


ズンッと、胸が重くなる。

大切なものだったのに、どうして落としたりしたんだろう。

絶対に無くしちゃいけないものだったのに…。

悲しくなって体を起こすと、フワッと手に何かが当たる。


「あ……カクレクマノミ」


それは、いつも添い寝をしているカクレクマノミの人形。

樹くんがくれた、私の大切な宝物だ。


「なんだか、無性に樹くんに会いたい……」


大切なものを無くした胸の痛みを、樹くんなら埋めてくれるような気がしたから…。



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