からっぽ。
手紙
《要一》



決心がつくと、色んな事が楽になった。


今日は、裕美の父親と会う。

言われる事も分かっていたし、伝えたい事も決まっている。


その前に……

歩実さんに、言っておく事がある。

沢山、支えて貰った。
本当は、直接伝えるべきだとは思ったが、手紙を書く事にした。


手紙なんて、初めて書くに等しいし字も上手ではない。

気の利いた便箋が見付からなくて、普通のノートを一枚破いた。


『残しておいて欲しい』


ただその思いから、スムーズとはいかないペンを走らせる。




そして俺は…

歩実さんの部屋に向かう途中、上着のポケットにある封筒を、何度も確かめていた………


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