からっぽ。
歩実さんに手紙を渡し、裕美の父親との待ち合わせ場所へと急いだ。


30分前に着いたのに、裕美の父親はもう来ている。


「坂下です。
遅くなって、すみません………」

と、頭を下げた。


顔色一つ変えず無表情のまま、頭を下げたのかどうかも分からない程の動作で、座っている。



コーヒーを頼み、一息ついた。


お互いに、話し出すキッカケを伺う。


「…裕美さんを傷付けた事、申し訳なく思ってます………」

先に口を開いたのは、俺だった。


何も答えない、父親。

「私の話を、聞いて戴けますか?」


何かを言いたそうな顔をしたが、堪える様に頷く。


「裕美さんにとって、決して良い話ではないのですが……」

「……分かった…」


俺は、昔、一緒に暮らした事から、話し始めた。



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