呼吸(いき)するように愛してる
いつも触れている匠くんの柔らかい唇に、自分の唇を押し付ける。少ししてから唇を離し、そっと目を開けて匠くんを見た。

匠くんは、目を丸くして私を見ていた。

「キャ~!お母さーん!美羽が匠くんにキスしたーっ!!」

お姉ちゃんがそう叫びながら、キッチンにいるお母さんの所へ走っていった。

いつも指で触っているから、その柔らかさとか感触とか。十分にわかっているはずなのに……

自分の唇でそれを感じると、なんだか……

恥ずかしくって、自分の顔が真っ赤になっているのがわかる。身体中が、どんどん熱をもってくる……

匠くんが私にしてくれるキスは、いつもおでこだ。軽く触れるだけの優しいキス。

こんな風に、唇をしっかりと合わせたキスなんて、匠くんとした事、あったのかなぁ……?

「…“やくそく”…だよ……」

囁くような声は、震えてしまったかもしれない。それでも、どうしてもこの言葉は匠くんに言いたかった。

「美羽がおおきくなったらけっこんしてくれるの、やくそくだよ!」

目を丸くしたまま、ずっと私を見ていた匠くん。私の言葉に、匠くんの頬が緩んだ。

「うん、約束!美羽が大きくなったら、僕のお嫁さんになって」

匠くんに頭を撫でられる。私は再び、ヘニャッと笑うと、匠くんの首に腕を回してしがみついた。

「たくみくん、だあいすき!ずっとずっと、だいすきっ!!」



私の中での“ファーストキス”は、この時、匠くんとしたキスだ。

そう言うと、お父さんは不服そうな顔をするけど『私の意思を伴わない身内からのキス』は、キスとしてカウントしない事にしている。

だから、あの時の匠くんとのキスが私の“ファーストキス”……

私の“初めて”は、全部匠くんとがいい……

そんな事を、ただ漠然と思っていた。

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