呼吸(いき)するように愛してる
急に、匠くんが私の右手を掴んで引いた。

『何?』若干、顔に熱をもちながら、手を引かれるまま匠くんについて行く。

「久々に俺が、美羽の髪の毛をドライヤーで乾かしてあげよう!」

リビングのソファーに私を座らせ、私の両肩に匠くんの両手をそれぞれ乗せた後、匠くんが爽やかに言った。

「はいっ!?いいよ、匠くん!もう子どもじゃないんだから、自分でできるよ!」

慌てて立ち上がろうとしたら、匠くんに両肩を押さえ付けられる。

「いいから、座れ!やらせてくれなきゃ、今日の夕食は食べないから!」

なっ、何!?その駄々っ子みたいな言い方は!

ちょっと悔しいけど、そう言われると私も弱い。

「わかりましたっ!匠くん、よろしくお願いします!」

首を、カクン!と折って頭を下げると「了解!」と、匠くんの弾んだ声がした。

「ドライヤー取ってくるから、美羽はここで待ってて」

今日の匠くん、いつもとキャラが違う……

鼻唄を歌いながら、ドライヤーを取りに行く匠くんの後ろ姿を見つめ、そんな事を思っていた。

ドライヤーを手にした匠くんが帰ってきて、私が座っているソファーの後ろに立った。

「お嬢様、失礼いたします」

「よきにはからえ」

妙な会話をした後、ドライヤーのスイッチが入った。

匠くんの長い指が、私の髪の毛をすきながら、温かい風をあてる。

その、触れているかいないかの微妙な感覚に、温風のあたっていない顔や身体も、じんわりと火照ってくる。

ひっ、久しぶりだから、なんか、照れているだけだよね!?

自分の熱をもつ身体をごまかすように、そう言い聞かせる。

後頭部の髪の毛が乾いたようで、匠くんがドライヤーのスイッチを切る。

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