呼吸(いき)するように愛してる
大きくなったら結婚するの!
私 朝倉 美羽(あさくらみう)は、姉 美音(みね)と六才年が離れている。

ずっと一人っ子のように、両親や周囲の大人達に「可愛い、可愛い」と言われて大きくなったお姉ちゃん。

ある日突然「赤ちゃんが生まれてくるんだよ。美音ちゃん、“お姉ちゃん”になるんだよ!」と言われても、納得がいかなかったのだろう。

私がお母さんのお腹の中にいた時、お姉ちゃんは、五才にして赤ちゃん返りをし、両親をひどく困らせたそうだ。

私が生まれてからは、初めて見る小さな生き物に興味を示し、その愛らしさと頼りなさに、ようやく“お姉ちゃん”としての自覚が芽生えた。

…と、本人は言っていた。…けど……私が思うには、お姉ちゃんは、自分専用の動く人形がやって来た! と喜んだに違いない。

そんなお姉ちゃんの代わりに(という訳でもないのだろうけど)、お腹の中の私に、本当に興味を示してくれたのは、お隣に住んでいた七才年上の栗原 匠(くりはらたくみ)くんだった。

匠くんには、一才上に要(かなめ)くんというお兄ちゃんがいる。匠くん兄弟と、お父さん・お母さんの四人家族だ。

うちも、両親がいてお姉ちゃんがいて、私が生まれて四人家族になった。

うちのお母さんと匠くんのお母さんは、小学校の同級生で、仲が良かったそうだ。

中学に上がる直前、うちのお母さんが引っ越してしまい、そのまま疎遠になってしまった。

それから、十数年後。

一才を迎えるお姉ちゃんを連れて、お母さんはまたこの町に引っ越してきた。「子育てには、田舎の方がいいよね」と、お父さんと相談をして。

こちらに住んでいたお祖父ちゃんの世話で買った中古のお家が、栗原家の隣の家だった。

久々の偶然の再会に、お母さん達は大喜びした。ちょうど、子ども達の年も近かった事もあり、一緒に過ごす時間が増えていったそうだ。

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