呼吸(いき)するように愛してる
匠くんの両親は、カフェを経営していた。おしゃれで、女の子に人気のお店だ。

家事にカフェの仕事に、休みなく働く匠くんのお母さん。ひどく疲れきった様子を見て、うちのお母さんは黙っていられなくなった。

「朋美(ともみ)、要くんと匠くんの事は、私に任せて! 美音も、賑やかになって喜ぶから!」

「苑子(そのこ)…ありがとう! 要達も苑子になついているし、すごく安心できる……」

以前は家政婦さんを雇っていたそうだが、ずっと来ていた人が、体調を崩して辞めた。

それから、違う家政婦さんが来るようになったのだが……

要くんも匠くんも、なかなかその人になつかない。それどころか匠くんは、はっきりと「嫌い!」と言う。

二人とも人見知りをする方ではないのにと、朋美さんは少し困っていた。

そんな時、お母さんが偶然見かける。夕方、お裾分けを持って、匠くん家の玄関のインターフォンを鳴らすが、反応がない。

「出かけてるはず、ないのに……」

不思議に思ったお母さんが、リビングが見える裏手の方に回ったら……

上半身を裸にされた匠くんと要くんが、その家政婦さんに、無理矢理抱きしめられていた。

驚いたお母さんは、鍵が掛かっていたリビングの窓ガラスを叩いた。

「何してるのっ!? 開けなさいっ!」

その家政婦さんは、慌てて逃げ出した。

その後、家政婦さんが逃げ出した玄関から、家の中に入ったお母さんは、泣きじゃくる二人を抱きしめた。

お母さんが朋美さんに連絡すると、朋美さんは飛んで帰ってきた。

やはり二人を抱きしめて宥め、落ち着いた頃、家政婦さんの事を訊いた。

こんな風に裸にされたのは初めてだった。けど、やたらベタベタと触ってきたり、顔にキスをしようとするので、気持ち悪かった……

二人は、そう話した。

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