呼吸(いき)するように愛してる
『“お礼”と言って、美羽ちゃんを食事に誘い出した。栗原主任との関係を探るのが目的だったのに、美羽ちゃんとの食事が楽しみで、マジでお店を選んだ。…いつの間にか、素の自分で美羽ちゃんと喋ってた』

「あのお店、ワクワクしました!」

クスッと須賀さんが笑う。

『……いろいろ聞き出しているうちに、美羽ちゃんの片想いの相手は、栗原主任だと気付いた。……何だか妙にイライラした。…合コンの日に見せた栗原主任の余裕のない態度。…俺が美羽ちゃんを傷付けたら、栗原主任はどうする?……その考えが、頭から離れなくて……ごめん。美羽ちゃんを傷付けた』

顔が見えないからこそ、鈍いと言われる私でも、須賀さんの話し方とか声色などから、須賀さんの気持ちを推し量ろうとする。

私の感じた事が正解なのかは、わからないけど……

「“腹黒策士”は、悪くないと思います!」

『はっ!?』

私のよくわからない返しに、須賀さんが戸惑いの声を上げる。

「“腹黒”て事は、人知れずお腹の中で様々な事を考えているって事ですよね?“策士”は、絶対におバカではなれません!……残念ながら、私にはどちらも無理です……」

私が沈んだ声で言うと、須賀さんが『美羽ちゃん……』と呟いた 。

少しの沈黙の後、須賀さんのくぐもったクククッという笑い声が聞こえた。

「っ!?須賀さん、笑ってますっ!?」

『イヤッ!……美羽ちゃんが、おかしな事を言うから……』

須賀さんの声が震えている。笑いをごまかす事も、やめたようだ。

「おかしな事!?……私、真剣に考えていたのに……」

『あぁ、ごめん……ありがとう、美羽ちゃん!』

須賀さんの声が、穏やかに聞こえる。

「“素”の須賀さんとの会話も、おもしろかったです。変に仮面なんて被らなくても、須賀さんと一緒にいるのは楽しいですよ!」

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