呼吸(いき)するように愛してる
須賀さんが、自嘲気味に笑う。

『一年前に異動してきた先輩が、栗原主任と仲がよくて。頼んで、栗原主任との飲み会に連れていってもらった。それからも何度か栗原主任と一緒に飲んで……『この人には、敵わない』そう思ったんだ』

須賀さんは、ただ淡々と言葉を吐き出す。

『裏表がなくて、心の大きな人だと思った。でも大ざっぱじゃなくて、一つ一つの事をきちんと見てる。……俺、栗原主任に惚れているのか、てくらい長所ばかりが目についた』

匠くんは、その容姿から女の子にモテた。でも、男友達もたくさんいた。いつも自然と周りに人が集まってしまうのが匠くんだ。

『男として…というか人間として、敵わないと思ったのは、初めてだった。ショックだったけど、栗原主任になら仕方ない…そういう気持ちもあった』

須賀さんの素直な気持ちだろうと感じた。

『…四月、美羽ちゃんに初めて会った時、なんかいいなと思った』

突然出てきた自分の名前に、びっくりした。

『素直で、変に媚びたりしなくて、もっと美羽ちゃんと話したいと思った。だから、戸崎さんに合コンを持ちかけた』

その時の事を思い出し、苦笑する。でも須賀さんには、変な企みとか本当になかったんだ。

『合コンに現れた美羽ちゃんは憂鬱そうだし、俺の事、警戒してたよね?そういう反応は今までなかったから、新鮮でおもしろかった!』

「おもしろい……」

『それが、あっという間に栗原主任に拐われて。美羽ちゃんと栗原主任が知り合いだったのにも驚いたけど、栗原主任の余裕のない態度も気になった。美羽ちゃんに、違う興味が湧いたよ』

あの日の匠くん、強引だったから。……知花さんの言う通り“ヤキモチ”だったのかな……?

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