呼吸(いき)するように愛してる
俺の本音だ。本当は、美羽と離れたくない!

美羽の瞳から涙が溢れた時、俺の中で小さく何かがはじけたような気がした。

美羽の左頬の涙を、右手の指で拭った後……

右頬の涙を、唇でたどった。唇がギリギリ触れている距離で、美羽の感触と体温を感じとる。

そして、しょっぱくて甘い美羽の涙を静かに味わう。

美羽が戸惑っているのはわかっていたが、どうしても抑えられなかった。

美羽、こんな俺をどう思った?いやらしいと軽蔑した?

「匠~!ちょっと来て~!」

階下から母さんに呼ばれる。

俺は何も言わずに…正しくは何も言えずに、美羽だけを残して部屋を出た。

……あの日俺は、美羽から逃げ出したんだ。



*****


大学生になってすぐに、二つ年上の人に声をかけられて、付き合うようになった。

背がスラッと高くて、緩いウェーブのブラウンの長い髪は艶やかで、大きな瞳と赤い薄い唇が印象的な、華やかできれいな人だった。

初体験も彼女とだった。彼女は初めてじゃなかったから、さりげなくリードされていた。

自分の身体が、ちゃんと美羽以外の人にも反応して安心した。

慣れない生活のバタバタもあってか、悪夢をみることもなかった。

……これで…美羽と離れてよかったんだ。

俺の誕生日に、美羽がパウンドケーキを送ってきてくれた。バースデーカードと一緒に。

お礼の電話をして美羽と久々に話したら、妙に緊張した。何を話したらいいのかわからず、早々に電話をきった。

美羽なのに……

美羽の誕生日にも、甘い物が好きだからスイーツを送る事にした。

いざ選ぼうと思ったら、お店の数やスイーツの種類が多すぎて、よくわからない。

< 258 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop