呼吸(いき)するように愛してる
「十一時までには、着けるかな……」

焦りながら、車を走らせる。

その時の俺は、冷静じゃなかった。『美羽に想いを告げる』その事だけに、意識を囚われていた。

事前の連絡もなしで、そんな遅い時間に美羽の家に訪ねて行く事に、何の疑問も感じていなかった。

こういう時に限って、事故渋滞で足止めされた。本当に今日は厄日だ!

ハンドルを握りながらイライラするが、どうしようもない。

そこさえ抜ければ、スムーズに車は走る。元々渋滞を起こす道でも、時間帯でもない。

いつもより強くアクセルを踏みながら、美羽の家を目指した。

実家の駐車場に車を止めれば、二十三時半になるところだった。

とりあえず、美羽の誕生日の“今日”に間に合ってよかった。

実家は静かで、人のいる気配がない。きっと誰もいないのだろう。

父さんと母さんは、お世話になった人の地元で喫茶店を始めている。カフェを全面的に任されるようになった兄貴は、カフェに寝泊まりする事が増えたと言っていた。

花束を持ち、美羽の家に急ぐ。

何て言うんだ……?『美羽に想いを伝える』それは決めたけど、どんな言葉で伝えるかなんて、ほとんど考えていなかった事に今さら気付く。

……仕方ない。出たとこ勝負だ……!

美羽ん家の玄関が見えた時、足を止めた。

玄関が開き、すぐの所に人が立っている。背の高い男だ。何か言いながら男が動き、男の向こうに誰かいるのが見えた。

「美羽……?」

男が美羽の肩に手をかけ、顔を近付けていく。

「えっ!?……」

二人はそのまましばらく動かない。俺もその場に立ち尽くす。

キス……してるのか……?

俺から見えるのは、ほとんど男の後ろ姿だが、二人の近すぎる距離はキスしているようにしか見えない。

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