呼吸(いき)するように愛してる
どちらも、今の俺にはせつなすぎる……

この花に、罪はない。俺が持って帰っても、どうせゴミ箱行きだ。……だったら……

俺は大きく息を吐くと、美羽ん家に向かった。



苑子さんに花束を押し付けるようにして、俺は朝倉家を後にした。

お風呂に入っていた美羽に、会わずに済んだのは幸いだった。

それからの俺は、また仕事に没頭した。

美羽を想っていた時間が長すぎたのか、どう気持ちを切り替えたらいいのかも、わからなかった。



──翌年、四月。

異動の辞令で、俺は九年ぶりに地元の町に戻った。美羽のいる町に……

どう距離をとろうか考えていたのに、自宅で俺を出迎えてくれたのは美羽だった。

大人になった美羽と、じっくりと対面するのは初めてだ。変な緊張がはしる。

ずいぶんと変わった。女らしい丸みのある身体に、スラリと伸びた手足。高校生の時の透明感は変わらないのに、柔らかな色気も感じて……大人の“オンナ”になっていた──

俺の夕食の世話をしてくれるようになった美羽と、毎日のように一緒に過ごすようになる。

夕食の世話を何とか断ろうとしてみたが、美羽にウルウルの瞳で「お願い」されてしまえば、それ以上何も言えなくなる。

昔も今も、美羽の「お願い」に弱いのは変わらない。……美羽が大人になった分、威力が増している。

同期との飲み会で行った店に、合コン中の美羽を見つけた時は驚いた。

有無を言わせず、拐うように美羽を連れ帰った。

大学の時の彼女に「頭数合わせに、合コンに参加してもいい?」と訊かれ、何の躊躇いもなく「いいよ」と答えた。

若干不機嫌になった彼女に「君を信じてるから」なんて、耳障りのいいセリフを吐いたが……

「信じる」も「信じない」も関係ない。美羽がそんな所にいる事が、俺が、イヤだったから。

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