呼吸(いき)するように愛してる
「美羽ちゃん、体操服後ろ前だよ」

「美羽ちゃん、また迷子にならないように、一緒に図書室行こうか」

小さな事から大きな事までいろいろと……前から気付いているつもりだったが、自分のお惚けぶりに、たびたび落ち込んだ。

「みちるちゃん、ごめんね…いつもありがとっ!」

情けないけど泣くのはイヤだから、瞳をウルウルさせながら言うと

「うん、わかってる」

と、表情を変えずに返された。みちるちゃんは私のように、思っている事をすぐに顔に出さない。私も、わざと出している訳ではないんだけど……

『クール』というのは、きっとみちるちゃんの事を言うのだろう。

でも、決して冷たい訳ではない。困っている友達に気付いて、一番に手を差しのべるのはいつもみちるちゃんだ。

そんなみちるちゃんは、すぐにクラスの中心的存在となった。男子も女子も、彼女に一目置いていた。

それでもみちるちゃんは、なぜか私の傍にいてくれた。

「みちるちゃん、どうして美羽と仲良くしてくれるの?」

出会って初めの頃、訊いてみた。

「……手のかかる子ほど可愛い?」

「・・・」

最後、疑問形に聞こえたけど…一年生のセリフとは思えないような返しをされて、喜んでいいのかどうか、よくわからなかった。が、「可愛い」と言われたので、良しにする。

「ありがとっ!でも、みちるちゃんの方がお人形さんみたいで可愛いよ!」

「・・・」


私が満面の笑みで返すと、みちるちゃんの眉がわずかに寄った。

そして、みちるちゃんを通して私にも、仲良しの男子の友達ができた!

島 広樹(しまひろき)くん。同じクラスで、みちるちゃん家のお隣に住んでいる。

私で言うと、要お兄ちゃんや匠くんだ。

同い年だったら、せめてお姉ちゃんみたいに、もっと年が近かったら……こんな風に、一緒に学校に通う事ができたんだと思うと、改めて悔しいし羨ましい……

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