呼吸(いき)するように愛してる
何も考えられずに、少しの間そうしていたが、ハッ!と我に返ると立ち上がって、慌てて家に戻った。

匠くんとまた顔を合わせても、どうしていいのか、わからない~~!!

挨拶もせずに匠くん家を飛び出し、家に帰っても、二階の自分の部屋に駆け上がった。

「美羽~!?」

お母さんの声が聞こえた気がしたけど、今は無理っ!

自分の部屋に入ると扉を閉めて、ベッドに倒れこんだ。

「初めて、ほっぺにキスされた……」

私の記憶にある中では……ていうか、あれは“キス”だった?……涙を、くっ、唇で、拭いてくれたような……ティッシュ代わり?匠くんの部屋には、ティッシュがなかったの?……そっか~…お家を出る前だったから、もうお部屋に、ティッシュが置いてなかったんだ~!

無理矢理、自分を納得させる。

反対の頬は指で拭ってくれたとか、匠くんの服の袖とかでも、よかったんじゃない?とかは、今は考えない事にする。

……匠くん、どうしてあんな顔してたんだろう……

考えない!と思ったはずなのに、どうしてもさっきの事から、離れられない。

辛そうな…泣きそうな……何かを我慢しているみたいにも、見えた!……匠くんが、何を我慢するの?

わからない!!わからないけど……簡単に、声をかけちゃいけない気がした……

……怖かった……?…うん。匠くんが、知らない人みたいで、少し怖かったんだ……

匠くんの事を「怖い」て思うなんて……

そう感じてしまった事に、自分自身が戸惑っていた。

結局、自分の事も匠くんの事もよくわからないまま、程なくして、匠くんの出発の時間がきてしまった。

お母さん、お姉ちゃん、私の三人で、匠くん家に見送りに行く。

お母さんとお姉ちゃんは、いつも通りの匠くんと話している。だけど私は、何を話していいのかわからず、そんな様子をじっと傍で見ていた。

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