呼吸(いき)するように愛してる
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多分、私がはっきりと覚えている一番小さな時の記憶は……

匠くんとの“結婚の約束”だ。

私が四才になる少し前。匠くんは五月生まれだから、もう十一才になっていた。

いつ頃からか、私の定位置は匠くんの膝の上になっていた。

匠くんの膝の上でお喋りをしたり、テレビを見たり……時には、匠くんと向かい合うように座り、身体に腕を回してギュッ!としたり、胸に顔を付けて眠ってしまったり……

匠くんのスベスベのほっぺを撫でたり、柔らかい唇を、指でチョンチョンと押してみたり……

幼かった私は、周りが苦笑いするぐらい、匠くんにベッタリだった。

要くんと匠くんは、私にとって『お兄ちゃん』で。私にとって『お姉ちゃん』は美音ちゃん一人だけだったから「お姉ちゃん」でよかった。

でも『お兄ちゃん』は二人いたから、名前を付けて呼んでいた。

「要お兄ちゃん」と呼びたかったけど、まだ小さかった私はちゃんと呼べなくて……「かめ兄ちゃん!」と呼ぶようになってしまった。

私が五~六才の頃、その呼び方を改めて笑われた。「要は、いつまでカメなの~?」て……

笑われた事に、プッ!と頬を膨らます私の頭を撫でながら、要くんはたれ気味の目尻を、さらに下げて笑いながら言ってくれた。

「可愛い美羽が呼んでくれるなら、僕はカメでもカッパでもいいよ!」

「かめ兄ちゃんだもん!美羽は、カッパなんていわないもん!」

要くんの優しいお言葉に、なんて可愛いげのない私……

結局、それからすぐのように「要お兄ちゃん」とちゃんと呼ぶようになった。

匠くんは……しばらく「たっくん兄たん」だった。匠くんが小さい時、お母さんは「たっくん」と呼んでいた。匠くんが成長して「匠くん」と呼ぶようになったんだけど、たまに以前の呼び方をする事があって……

小さかった私には、それが覚えやすかったようだ。自分でも、よく覚えていないけど。

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