【完】好きなんだからしょうがないだろ?
轟先輩は、コーヒーを口に運ぶとあたしへ目線を移す。
バチッ、と目が合う。
「忘れたいことの一つや二つ誰にでもある。俺もアンタと同じだ」
「轟先輩が、あたしと同じ……ですか?」
驚いたあたしのフォークに刺さったブラウニーが転がるように落ちる。
「麻白が俺の上に落ちてきた時。思い出した」
「うっ……、思い出したって何をですか?」
「空から降ってきた“アイツ”のことをだ」
「アイツ……」
繰り返し、ふと轟先輩が前にも同じことを言っていたことに気づく。