東方想雨天
「博麗神社で独りになった私を一人前の博麗の巫女にする為、紫は私に修行を積ませた。やりたくもない巫女の仕事。失敗すれば命を落としかねない妖怪退治まで。毎日、ずっとやってきたわ。逃げ出したりしたこともあったけど、逃げだせば妖怪に襲われたりして、結局逃げられなかった。もう何年経ったかしら……。紅霧異変が起こるまでずっと妖怪退治してたわね」
「でも、その後はちゃんと全ての異変を解決してきたんでしょ?」
「まぁ、ね。でも、全部イヤイヤやってたわ。いつも、魔理沙が突っかかってきて、それに便乗するようにやってきたわ。今回の異変もそう。正直私は嫌だった。雨の影響もあったけど、嫌な予感があった。実際に、歯向かう妖怪、妖精から影が現れ苦戦した。更に、私の影も現れ、たくさん辱められた。さっき、起き上がっても蹴落とされてもいいと思っていた。でも、気が変わったわ」
「………?」
「その可哀相な人生を歩んできた貴方を救ってあげる。その神には悪いけど、その子は関係ないわ。放して私と戦いなさい。さもなくば、魂を細切れに崩してやるわ」
 霊夢の言葉に、雨那の中にいるミツハノメノカミが答えた。
「私と同じ思いを持つ彼女が関係ないと?そして、一度敗れたお前に私が勝てると?小賢しい……。憐れな小娘よ。私に喧嘩を売ったこと……後悔するぞ!」
 雨那の胸から淡い魂が出てくると、雲海の雲全てが魂に吸収されていった。そのすきに、魂を抜かれて気絶した雨那を安全な所に連れて行き、戦闘態勢に入った。
 本殿最奥で眺める青蛾は、魂目掛けてある水をぶっ掛けた。
「邪仙!何を!」
「私が練るに練った計画を崩してくれたわね。もういいわ。貴方には消えて貰うわ。ミツハノメノカミに海1つ分の濃縮した水を与えたわ。これで彼は本物の神になれるわ」
「なっ……!?」
「無様な死に方を期待してるわ。それじゃ」
「待て!邪仙!」
「おおぉぉぉぉぉぉ!!」
 霊夢は振り返ると、とてつもない大きさのスライム状の異形が寺全体を包み込もうとしていた。それだけは防がないと、皆の命が危ない。霊夢は、符を中央に投げた。
「博麗大結界!」
 寺社の風景が消え、大草原に変化した。霊夢は戸惑うスライムに祓い棒を向けた。
「こっからは私のターンよ」
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