愛しい人


「ねえ。鳴ってない? 小石川さんのスマホ」

「え?」

 そう言われてバッグの中を見るとスマホが震えながら光っている。

取り出して見てみると純正からの着信だった。

「出ないの? あの先生からでしょ」

「……そうです。けど……」

 電話に出たら確かめずにはいられない。

自分以外に大切な存在がいるのかどうかということを。

けれど問いただしたい気持ちよりも、真実を知ることの怖さが勝ってしまった。

そうこうしているうちに画面が真っ暗になった。

着信が切れたのではなく、落とした衝撃で故障したのだろう。

その証拠に、スマホに触れても画面は黒いままだ。

「どうしよう……出られなかった。スマホも壊れちゃったみたいです。何やってるんだろう、私……」

 うっかりスマホを落としたり、いろいろ思い悩んでもたもたしているからこうなった。

花名は自分を責めずにはいられない。
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