ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
 移植手術に関する記事を片っ端からネットで拾っていたとき、ある記事に興味を引かれて読んだことがある。

 その記事によると、心臓の移植手術をしたアメリカ人の患者さんが手術後に、食事の好みや服の好みが驚くほどガラリと変わってしまったと書かれていた。

 調査の結果、それはまさしくドナーの好みそのもので、移植された臓器の細胞に記憶が残っていたのでは? という内容だった。

 そのときは、ありがちの都市伝説的な話だなぁと思っただけだったけれど、いざこうして不思議な現象が自分にも降りかかると、さすがに気になってしまう。

 気になると言うか、正直なところ怖い。まるで自分が怪談話の登場人物になってしまった気さえする。

 それで思わず先生に、『そういうことって、現実にありえるんですか?』って聞いてしまった。

『ありえない』って即答されて、苦笑いまでされてしまったけれど。

 そういう記事を読んだ記憶が、術後の興奮がまだ収まらない脳を刺激して、そんな夢のストーリーを作り上げてしまっているんじゃないか? ってことだった。

 気になるなら心療内科を受診してみる? って言われて、あたしは慌てて首を横に振った。

 隣で話を聞いていたお母さんの表情が、みるみる心配そうに曇ってきたのに気がついたからだ。
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