「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 


「里桜奈、もうすぐ三学期でしょ。
 宿題は終わったの?

 悲しいことが続いた冬休みだったけど、
 ゆっくりと前に進みなさいね」


そう言うと、今もAnsyal話題が続くテレビのチャンネルをお母さんは変えた。
だけどどのチャンネルも、Ansyalの話題を取り上げていてすぐにテレビを消してくれた。




「ごめんね……テレビ。
 私、自分の部屋に行くからお母さんは好きなテレビ見てね」


声をかけて私は自分の部屋に戻った。




ノートパソコンを立ち上げて、『Ansyal』のキーワードでいろんな情報を検索する。





私や紗雪が、祐未の死で経験したみたいに……全国に住むAnsyalファンたちで、
私たちと同じように大切な仲間を……友達を失った子たちも存在していた。






Taka 



Takaなんて大嫌い。
大好きだけど……大嫌い。



もう生きていたくないよ。
Takaが居ない世界。


光を失った世界なんて、
もうどうでもいいよ。







Takaさま


今から貴方のところに行きたいって言ったら、
貴方は私を迎えに来てくれますか?


Takaの曲を聴きながら、
Takaに包まれて眠るように貴方の傍に行けたら
どんなに嬉しいかな。








Taka Taka Takaっ!!



どうして居なくなったの?
二人のTakaなんて私は知らない。


隆雪と雪貴ですって?


なんでそんな、ファンを裏切るようなことするのよ。

ずっと違和感あった。

あの聖夜のLIVEから、音変ったもん。
ファンをバカにするのもいい加減してよ。



私にとってのTakaは、Takaだけ。
偽物のTakaなんていらない。


Ansyalの本当のTakaを返してよ。











Takaをキーワードに次から次へと引っかかる
ファンのBLOGの悲痛な叫び。



そんな日記を読んで居たら、
本当にTakaが居なくなってしまったのだと
少しずつ私の中で、Takaの死がリアルへと変わっていく。




【Ansyal Taka 死因】




恐る恐るそんなキーワードを検索画面に打ち込む。




すると飛び出してきたのは
Ansyalのメジャーデビューと同時に脳腫瘍。

聖夜のLIVEに向かう途中の交通事故で植物状態。




脳腫瘍と植物状態だったなんて言う情報が
ソースが何処かなんてわからないけど溢れかえってた。





裕先生……先生は託実さんの従兄弟だって診察の時に話してくれた。



先生に聞いたら……Takaのこと、もっとわかるのかな?
そんなことを漠然と考える。


だけどすぐに、それはイケないのだと自分に言い聞かせる。



そして次に浮かんだ思考は、二人のTaka。


お兄さんのTakaさんがAnsyalを組んで、
弟のTakaさんが、お兄さんが倒れた後、ずっと影武者として活動を続けてた。


解釈としては、あのインタビューはそんな話だったはず。



私が出逢ったのは?
私が……LIVEで応援し続けてたTakaは今、どうしてるの?




ふとそんなことが気になって、次のキーワードを検索する。
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