魔女の瞳Ⅲ
でも。

私には百禍の気持ちが少しだけ理解できた。

…だって百禍は『私』だから。

ヨーロッパの薄暗い森の奥深くで、誰にも知られる事なくひっそりと魔道の研究を続けてきた魔女の家系。

しかし時代はその魔女の一族の存在を許さなかった。

住処を追われ、土地を転々とする日々。

それでもデッドゲイトの一族には、人間を傷つける事は許されない。

『限定』の魔術の戒めの為、どれ程迫害を受けても人間にその力を行使する事はできなかった。

共に生きる事も、隠れ住む事も許されない日々。

そして、やっとの思いで手にした、己を受け入れてくれる少女とのささやかな日々も、悪意ある人間達の手で無惨に奪われて…。

私だって、人間を手にかけたのだ。

この世の全てを呪い、世を儚み、失望して死を選んで、それでも死ぬ事さえ許されなくて…。

今、目の前で呪詛の言葉を吐く百禍。

私は彼女を責められない。

彼女とあの時の私。

一体何が違うというのだろう。



< 70 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop