強引上司がいきなり婚約者!?
私が素直に答えると、兎川さんは口角を上げてイジワルな顔をする。
ふっと背の高い腰を折って、私の耳元に低い声で囁いた。
「そのうちこれが普通になる。はやく慣れてくれよ、奥さん」
私は右の耳を押さえ、危険な香りのする兎川さんから距離を取った。
「かっ、仮想です! しかも奥さんじゃなくて、まだ婚約者!」
思わず立ち止まってそう叫んでしまい、慌てて両手で口を塞ぐ。
でも言ってしまったものは取り消せなくて、周りを歩いていたマダムたちにクスクスと笑われてしまった。
あああ!
絶対なにか勘違いされてる!
少し先を歩く兎川さんも、プッと吹き出して肩を震わせている。
私はムッとして頬を膨らませながらも、赤くなってしまった顔を隠すように、背の高い彼の横にぴったりとくっついて歩いた。
そんなこんなで買い物を済ませてから、兎川さんの車に乗って彼の家を目指した。
主任のことだから、きっといい物件に住んでいるんだろうってことは予想してた。
だけど高級住宅街にある地下駐車場に車を止め、お城かと思うような立派なマンションの前に立たされたときはあんぐりと口を開けてしまった。