強引上司がいきなり婚約者!?
兎川さんは固まる私の腕を引き、広いエントランスホールをスタスタと進む。
エレベーターで11階に上がり、共用廊下を通って、つきあたりにあるのが彼の部屋だった。
映画のセットみたいな玄関に押し込まれて、私は思わず大きく息を吐いた。
「なんで息止めてんだよ」
今日の主任はなんだか上機嫌で、いつもの俺様モードよりもたくさん笑ってくれる。
イジワルな顔をしたオフィスのエースにからかわれるのが恥ずかしくて、私はふいっと目を逸らした。
「なんか、呼吸をするのも申し訳ない気がしまして……」
妙に息苦しいと思ったら私、なるべく息を吐かないようにしていたみたい。
兎川さんが契約通り家事の指導をしてくれるっていうから、ノコノコついてきちゃったけど……。
私、とんでもなく場違いなところに来たのかも。
買い物袋を下げて廊下を進む兎川さんに促され、恐る恐る部屋に足を踏み入れる。
兎川さんのお部屋は立派なリビングダイニングに寝室と小さめの洋室がふたつ、広いお風呂とバルコニーもついた贅沢な3LDK。
リビングには「そのへん適当に座って」なんて言われても、どこに腰掛けていいか迷うほど大きなソファが置いてある。
これはあれだ。
文字通り、住む世界が違う人だ。