強引上司がいきなり婚約者!?
「あの、兎川主任って何者なんですか」
冷たいお茶を出してくれた兎川さんにお礼を言い、小声で訊ねる。
だって、いくら朝比奈ホーム営業部のエースとはいっても、こんなところに住んでるなんて普通じゃないと思う。
隣に座った兎川さんは怪しむ私の表情を見ると、急に真面目な顔になって答えた。
「親父は空自のパイロットで母親は海外を転々としてる外交官。転勤の多い放任主義な両親に育てられた俺は、大学時代に遊びで起業した会社でちょっとした貯金をつくって、大企業の取締役をやってる兄貴のツテでこのマンションを買った」
「……え」
えーっと、遊びで起業ってなに?
こんなマンション買えるほどのお金が"ちょっとした貯金"って?
兎川さんってもしかして、想像以上にものすごい家系の人?
もともと近寄りがたい上司だと思ってたけど、やっぱり平凡な私とは本来縁のない男性なのかも。
なんて、兎川さんとの距離が光の単位で離れていくのを感じてずーんと気分が沈む。
いやいや。
なんで落ち込むの、私。
私がよっぽど変な顔をしていたのか、兎川さんはぷっとおかしそうに吹き出すと、私の鼻のてっぺんをちょんとつついた。