強引上司がいきなり婚約者!?
「だ、だから、もう兎川さんの側にはいられないと思うんです」
自分で口にした言葉に、ガーンとショックを受けた。
ジワジワと浮かんでくる涙を引っ込めるために、何度も強く瞬きをする。
これ以上なにかしゃべったら声が震えてしまいそう。
車内には今の私が誰よりも信頼する男性しかいないというのは、見栄を張り続けるには適さない環境だった。
だけど声の震えを心配する必要はなかった。
私がそれ以上なにも言わないとわかると、兎川さんは一度だけチラリとこちらを見て眉を上げ、またすぐに前方へ視線を戻す。
しばらく状況を飲み込もうとするような沈黙のあと、ポツリと呟いた。
「参ったな。そうきたか」
それから兎川さんはなにかを考え込むようにジッと黙り込んで、もう私に質問をすることもなくなった。
車が左折して大通りを逸れると、スムーズに走り出す。
ここから私のアパートまではそう混み合う道もない。
どうやらこれで話し合いは終わったみたいだけど、そのことについては部屋のベッドにたどり着くまで考えないことにした。
アパートの前の小径に入ったとき、いつの間にか不機嫌になった兎川さんが言った。