強引上司がいきなり婚約者!?
「泣くな! 悪かった! いじめすぎた」
兎川さんは眉尻を下げてオロオロしながら懸命に私の頬を拭う。
兎川さんからさっきまでの不愉快オーラが立ち消えると、ホッとして子どものように彼を詰った。
「兎川さんの、いじわる……!」
「悪かったって。だから泣き止め」
ほとほと困り果てた様子の兎川さんが、親指でそっと目の下を撫でる。
やっぱり私の"好きな人"が誰だかわかってて、いじわるで言わせようとしたの?
だとしたらちょっと腹黒すぎませんか。
私がスンと鼻を鳴らして目を閉じると、兎川さんは私の頬を包んだまま、言い訳をするように白状し始めた。
「でも、ちょっとくらいいじわるもしたくなるだろ。こっちはまったく脈ナシの好きな女振り向かせるために相当涙ぐましい努力したんだぞ。これ以上どうしろってんだよ」
私は眉根を寄せたままパチリと目を開ける。
しっかりと兎川さんの顔を見つめてみても、彼の言っていることはいまいちわからなかった。
私がちっとも理解していないと見て取ると、兎川さんは拗ねたようにムッとしてまくし立てる。