強引上司がいきなり婚約者!?

「お前ってほんと、俺のこと眼中にないよな。どんだけド真ん中に直球投げても、打ち返してほしい相手は俺に興味がなさすぎてかすらせもしなかったんだよ。お前を一塁まで歩かせるには、変化球でもなんでも投げてベース・オン・ボールズしかないだろ」


えーっと、ちょっと待って。

兎川さんがきっと野球を例えに出しているんだってことは理解できる。

でもその野球のルールを知らない私には、当然その意味もさっぱりだ。


それでも「?」マークを大量に浮かべながら一生懸命頭をひねっていると、兎川さんが諦めたように盛大なため息を吐く。

それから、ふっと目尻を下げて微笑んだ。


ああ、こんな優しい笑い方もできる人なんだ。

お腹の中で撃ち落とされていた小鳥が、生き返って羽ばたき始めている。


嬉しくなって、首を傾げたままなんとなく微笑み返した。


すると兎川さんが私の右手を取り、そっとあたたかく包み込んで、ゆっくりと顔を近づけてくる。

キスをされるんだってわかったけど、もちろん抵抗はできなかった。


手を握ったまま、兎川さんの唇が慰めるように私に触れる。

慈しむようなそのキスに、思わず考えていたことのすべてを放り出した。
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