強引上司がいきなり婚約者!?
耳の横を全速力で血液が駆け抜け、キスの魔法が私の全身を心臓に変える。
爪の先までドキドキする。
兎川さんは傾けていた顔をほんの少しだけ離すと、唇の触れる距離で私にもわかるように噛み砕いて教えてくれた。
「だから要するに、あの【社内恋愛法度】に、俺は最初から違反してた。ずっと好きな女がいたんだ。もちろん、ニセモノじゃなくて、本気で。そうじゃなきゃ、あんなめんどくさい契約持ち出さない」
私の疑問の声を、もう一度キスで奪い取る。
今度は今までとは違って少しだけ強引で、溶けてしまいそうなキスだった。
好きでもない相手にこんなキスはできないって、そう思い知らせるような。
兎川さんは息の上がった私を解放すると、軽く抱き寄せて、こんな私でも一度で理解できるように直接耳元に囁いてくれた。
「なめるなよ。お前が俺を好きなことくらい、ちゃんとわかってる。ただし言っておくが、俺のほうがずっと前から志帆を好きで仕方なかった」
耳まで熱くなった私は、火傷したように身体を離した。
つまり、それって……。
私はあの契約を受け入れたときからから兎川さんの思い通りで、すっかり罠に嵌められたってこと?