溺愛ドクターに求愛されて
起きた時に裕介さんがいなくて良かったような、悲しいような複雑な気持ちを抱えて、京都の町を歩く。
急いでホテルに戻って、荷物をまとめた私は逃げるようにホテルを出た。
ちょうど良く時間の合った新幹線に飛び乗って、私は苦笑いをした。
京都に来た時は弘樹から逃げてきて、帰る時は裕介さんから逃げてきた。
だってもう夢のような時間は終わりだ。夢は醒めるものだもの。
最悪な誕生日になると思ったけど、裕介さんのおかげでそうはならなかった。
裕介さんは好きって言ってくれてたけど、あんな人が私の事を好きになってくれるわけがない。身体から始まる恋なんて、そんなのありえない。
よく知りもしない男とああいう事をしてしまう軽い女だと思われてそうだし。
もしかしたらそれで朝いなかったのかもな。そう思って私はため息をついた。
夢から醒めて、明日からまた現実だ。
もうきっと二度と会うこともない。
そう思ったら自分で招いた事なのにどうしようもなく寂しくなって、涙が出そうになった。