同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
彼の口から紡がれる懐かしい方言が、比留川くんとのことで弱った心に沁みる。
嵐の抱える事情も理解したし、一度は好きになった相手だから、それなりの好意もある。
比留川くんを想うことに少し自信を無くしている今、嵐の誘いに乗って、地元に帰る方が楽になれるんじゃ――。
「……あれ? みちる?」
そのとき、離れた場所から知り合いの声が聴こえて、思わず声のした方を振り向く。
そこにいたのは同期の理央で、私と嵐とを見比べてなんだか妖しい笑みを浮かべる。
まさか、何か勘違いしてるんじゃ……。
「あ……ゴメン。デート中だった?」
……やっぱりー!
咄嗟に反論しようとすると、嵐の方が先に立ち上がって理央の前に出ていく。
「みちるの友達ですか?」
「はい。同じ会社の同期なんですー! 笹川理央と申します」
愛想よく挨拶する理央に、嵐も柔らかい微笑みを返す。
「甲本嵐です。みちるとは昔付き合っていて……どうにか関係を修復できないか、と口説いていたところです」
嵐もなにバカ正直に本当のことを教えてるのー! 理央のニヤニヤが半端ないんですけど!
「きゃー、そうだったんですね! じゃあホント、邪魔者は退散しなきゃ!」
「いえ、私も仕事に戻らなくてはいけないので……よかったらここ、座ってください」
さっきまで自分の座っていた席を、嵐が理央に勧めた。