同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


「ううん、偶然会ったの。ちなみに私、みちるが元彼に言い寄られてる決定的瞬間見ちゃったんだ~」

「ちょ! 理央!」


それは比留川くんに言う必要ないでしょ!

私はうろたえてベンチから立ち上がり理央の服をつかんだけど、彼女は意に介さず話を続けていた。


「うん、また月曜に。ありがとねー」


通話を終えた理央は、スマホをバッグにしまって、気を取り直したように言う。


「封筒は比留川くんが持ってるって。失くしたわけじゃなくてホッとした~。さ、本腰入れてプレゼント探そっか!」

「うん……よかったね。理央……」


私は力なく返事をして、フラフラと理央についていく。

私が元彼に言い寄られていると知って、比留川くんどう思っただろう。嫉妬なんて、してくれるわけないよね……。

いったい彼の中で、私はどういう位置にいるんだろう。

同居を解消する気もなさそうだし、比留川くんの本心が全く読めない。


「ちょっとみちる! 来て! これ可愛くない?」


離れたショップから私を呼ぶ理央の声に我に返る。

……今は肝心の本人が近くにいないし、考えていたって仕方ないか。

私は気持ちを切り替えて、プレゼント選びに集中することにした。


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