同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
「それで、自分はようやく自らが犯した間違いに気がつきました。同時に、吉沢さんのおっしゃっていた二人の部下……あなた方にお会いして、謝罪しなければと思った次第で」
そうか、彼が少し大げさすぎるほど律儀に見えたのは、そういう理由があったからなんだ。
蒲生さんの誠意と、部長が私たちをどれだけ信頼してくれているのかが伝わってきて、じんわり胸があたたかくなる。
「蒲生さんのお気持ちはわかりました。もう、あまり気になさらないでください。……私たちが現場と喧嘩したことまでばれてしまっているのはお恥ずかしいですけどね」
照れ笑いを浮かべつつ、同意を求めるように比留川くんの方を向く。
しかし彼はクスリとも笑っておらず、予想もしていないことを言い出す。
「蒲生さん、今回の件があったから交換条件というわけではないのですが……ハイマウンテンのピーベリー、もう少し優先的に当社に回していただけませんかね」
「えっ……! で、ですがあれは一本の木から10パーセントしか採れない希少な豆で」
突然比留川くんが持ち掛けた交渉に、今まで腰の低かった蒲生さんが、急に動揺して怯えたような表情になる。
「ええ、大量に、というのが不可能なのは承知しています。しかし将来的にあれを使った商品を企画してみたい。今は開発段階ですので、わずかな量でも構いません」
やっぱり、比留川くんは商品の企画となると、表情が生き生きするな……。
まるでやり手の営業マンのごとく、なんとか蒲生さんの懐に入り込もうと会話を重ねる彼の姿に、不謹慎ながら胸がときめく。
ああダメだ、真面目に仕事に打ち込もうと決めたはずが、全く彼のこと吹っ切れそうにないじゃない……。