同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


それならよし、と偉そうにうなずいた玄太は、これまた注文してもいない生ビールのジョッキを俺の目の前に置く。
彼女が来る前に景気づけだ、とでも言いたいのだろう。

サービスのふりしてどうせ勘定は取るんだろうし、ありがたくいただくか。

俺はジョッキを勢いよく煽り、喉を鳴らしながらビールを流し込む。


待ち合わせているはずのみちるが来ないうちに、俺はジョッキを三杯空にし、ほどよく酔いも回ってきた。

遅いな……。帰りがけに声を掛けた彼女はまだ仕事中だったが、終わるまでそうかからないと言っていたから、そろそろ来てもいい頃なのに。

ぼんやりそう思っていると、ポケットの中でスマホが振動する。

みちるから、だ。今まで仕事をしていたのか?

表示された名を確認した俺はすぐに画面を操作し、スマホを耳に当てる。


「もしもし?」


そこから彼女の声が聴こえてくると当たり前のように思っていた俺の耳に入ったのは、予想外の野太い声。



『おめぇが、みちるを弄んどるっちゅーチャラ男か?』



標準語とは違う独特のイントネーションに一瞬思考がストップするが、俺はすぐに思い当たった。

おそらく、電話の向こうにいるのは“アイツ”だ……。

笹川に電話で聞いた、みちるに言い寄る“元彼”というのも、きっと同じ男。


いつも、彼女の隣には奴がいた。そのころから、俺はずっと見ていたんだ……。


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