同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
胸の内に静かに燃え上がるのは、過去のある時期にも感じた嫉妬の炎。
チャラ男という言い方は癪に障るが、相手を挑発するためにあえて否定しないで様子を窺う。
「……だったら?」
『そんなん、決まっとろーが。みちるを岡山に連れて帰るんじゃ』
何を勝手なことを……。あの時は彼女を捨てたくせに。
ぎり、と奥歯をかみしめ、俺はハッキリと告げた。
「そんなこと、俺がさせない」
『ほー、カッコええのう。でも、チャラ男っちゅー生き物は口が巧いけえ信用できん。おめぇ、ほんまにみちるのことが大事なら、今からここ来い。本人も一緒におるし話はそれからじゃ』
「……望むところだ」
直接対決か……こっちとしても願ったりかなったりだ。
ただの嫉妬と言ってしまえばそれまでだが、昔から奴のことはいけ好かなかったのだ。
俺は二人の居場所を聞き出して電話を切ると、ガタッと席を立って玄太に告げる。
「……行くところができた。今回の分はツケといて。友情価格で」
「おお、了解。二割増しな」
「ふざけ……、まぁ俺とお前の友情なんてそんなもんか」
ふう、と切なげに息をつけば、玄太が慌てて声を上げる。
「薄情なこと言うな! 冗談だ!」
「なんだ、冗談かよ」
ライバルとの会話で少しヒートアップ気味だった心が、玄太とのくだらない会話で少し紛れる。
サンキュ、だなんて本人には絶対言ってやらないが胸の内で呟き、椅子の背もたれに掛けていた上着を羽織って外に出る。