同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~
俺はすぐにタクシーを拾い、みちる達のいるという会社近くのカフェを目指す。
シートに深く腰掛けぼんやり窓の外に広がる夜景を眺めながら、俺はこれまで彼女と重ねた時間を思い返した。
彼女のことが気になり始めたのは、この春の昇進がきっかけだった。
それまでは、隣の課にもひとり同期がいる、くらいの感覚しかなくて、もちろん顔をまじまじと見たりしたことなどなかった。
しかし、同時期の昇進ということになり、改めて“難波みちる”というのはどんな社員なのだろう……と彼女に注意を払うようになると、俺はあることに気が付いた。
大学の頃から引きずっていた恋……その思いを抱いた相手と彼女が、どことなく似ている、と。
たとえば透明感のある白い肌、肩下ほどのセミロングの髪、垂れた目元、スッとした鼻筋……。
しかし、それは自分の未練がましさがそう見せているだけかもしれないと思ったし、よくよく彼女を見ると、違う部分も多かった。
あの子はもっと素朴な印象だったが、みちるはその真逆でどこからどう見ても垢抜けた都会の女。
だから、似てはいるが他人の空似と言うヤツだろうと結論付けた。
みちるはあの子ではない。それをわかったうえで、容姿だけでなく彼女の仕事ぶりや明るさに、次第に惹かれていく自分がいた。
新しい恋ができるのなら、それもいい。
このまま、自らの感情の流れに身を任せてみよう、と思っていたのだが――。
まさに一歩彼女との関係を踏み込もうとしたその夜、俺は過去の恋を再び記憶から呼び起こすこととなった。
きっかけを作ったのは、みちるの方だった。