同期と同居~彼の溺愛中枢が壊れるまで~


なんとか彼女を引き留めようとうまい言葉を探したが、熱のせいもあり頭がうまく働いてくれない。

その間にみちるは別れの挨拶を勝手に始めていて、そのときようやく彼女は認めたのだ。

自分が、田舎者――つまり、東京出身者ではないということを。

そして――。



「比留川くん。あんたのこと、ぼっけぇ好きじゃったよ。……ほんならな」



無理に作った笑顔を俺に向け、涙をこぼしながら気持ちを打ち明けてくれたみちる。

みちるの正体に気が付いてからずっと恋い焦がれていた、彼女の岡山弁。

それがやっと聞けたと思ったら別れの言葉だなんて、そんなのないだろ……。


「みちる! 待ってくれ、俺は……!」


逃げるように家を出ていこうとする彼女を追いかけたいのに、廊下に出ただけで身体がフラフラして、壁に手をついて立つのがやっとだった。

そしてあっという間に玄関の扉の向こうにみちるが消えてしまうと、気力も体力もすっかり失われてしまい、部屋に戻りベッドに倒れこんだ。



 * * *



……あの時は本当に情けなかった。しかし、馬鹿みたいにずっと寝ていたおかげで風邪は治った。

もう、手段なんて選んでいられない。

たとえ会社であろうと、みちると二人きりになれるチャンスがあれば、話をしよう。


そんな強い気持ちを抱いて迎えた今日、俺は無事、応接室にてみちるを捕獲。

今夜会う約束を取り付け、玄太の店ですべて話すつもりでいたが……なかなかみちるが来ないと思っていたところになぜか彼女の元彼から呼び出しがあり、今に至る。


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